世界中の株式にこれ1本で投資
前回の「家族や友人にすすめるETFシリーズ①」では、米国株式市場ほぼ全体へ投資できるVTIをご紹介しました。
VTIは、米国の大型株から小型株まで幅広く保有できる、低コストで魅力的なETFです。
ただ、家族や友人に投資をすすめるとき、
「アメリカだけに投資して大丈夫なの?」
「もっと世界中に分散した方が安心では?」
と聞かれることもあると思います。
私自身も、投資について学び始めた頃は、「米国株だけにするか、全世界株式にするか」で迷いました。
そこで今回は、世界中の株式へ1本で分散投資できるETF、VTをご紹介します。
VTの特徴やメリット・デメリット、VTIとの違いまで、具体的な数字を交えながら考えていきます。
VTとは?
VTの正式名称は、Vanguard Total World Stock ETFです。
米国の大手運用会社バンガードが運用しており、日本を含む先進国と新興国の株式へ幅広く投資します。
連動を目指す指数は、FTSE Global All Cap Indexです。
この指数には、世界各国の大型株・中型株・小型株が含まれています。
簡単に表すと、VTは、
「世界中の株式市場を、これ1本でまとめて保有するETF」
です。
特定の国や企業を自分で選ばなくても、世界の株式市場全体へ分散投資できます。バンガードによると、VTは先進国と新興国を含む世界各国の大型・中型・小型株へ投資する設計です。
VTの基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ティッカーシンボル | VT |
| 正式名称 | Vanguard Total World Stock ETF |
| 運用会社 | バンガード |
| 設定日 | 2008年6月24日 |
| 連動指数 | FTSE Global All Cap Index |
| 経費率 | 年0.06% |
| 投資対象 | 世界の大型株・中型株・小型株 |
| 保有銘柄数 | 約10,000銘柄 |
| 投資地域 | 米国、日本、欧州、新興国など |
| 分配金 | 年4回が基本 |
| ETF純資産総額 | 約776億ドル |
| VTの経費率は年0.06%で、2026年6月30日時点の保有銘柄数は10,048銘柄、ETF純資産総額は約776億ドルです。 | |
| ※数値は変動します。購入を検討する際は、バンガードや証券会社の最新情報をご確認ください。 |
約10,000銘柄に投資するとはどういうこと?
VTは、約10,000銘柄へ分散投資します。
前回紹介したVTIの保有銘柄数は約3,500銘柄でした。
それでも十分に分散されていますが、VTは米国だけでなく、日本、欧州、カナダ、新興国なども含むため、さらに投資先が広がります。
| ETF | 保有銘柄数の目安 | 投資対象 |
| VTI | 約3,500銘柄 | 米国株式市場ほぼ全体 |
| VT | 約10,000銘柄 | 世界の株式市場ほぼ全体 |
| VTは、世界の投資可能な株式市場の98%以上をカバーする設計とされています。 | ||
| 個人が約10,000社を自分で調べて購入するのは不可能に近いでしょう。 | ||
| しかし、VTなら1本購入するだけで、世界中の企業をまとめて保有できます。 |
VTを家族や友人にすすめたい5つの理由
① 世界中の株式へ1本で分散できる
VTの最大の特徴は、投資先が米国だけに偏らないことです。
米国、日本、欧州などの先進国に加え、中国、インド、台湾などの新興国の企業も含まれます。
どの国が今後最も成長するかを、正確に予想することはできません。
現在は米国企業が世界の株式市場で大きな割合を占めていますが、将来も同じとは限りません。
VTを保有していれば、世界の中心となる国や企業が変化した場合も、その変化を自動的に取り込める可能性があります。
② 約10,000銘柄に分散できる
VTの保有銘柄数は約10,000銘柄です。
Apple、Microsoft、NVIDIA、Amazonなどの米国企業だけでなく、台湾の半導体企業、日本の自動車会社、欧州の医薬品会社なども含まれます。
ただし、約10,000社を均等に保有しているわけではありません。
VTは時価総額の大きな企業ほど組入比率が高くなる仕組みです。
そのため、世界全体に投資していても、実際には米国の大型企業から受ける影響が大きくなります。
③ 経費率は年0.06%
VTの経費率は年0.06%です。
100万円を1年間保有した場合、単純計算による運用コストの目安は約600円です。
| 投資金額 | 年0.06%のコスト目安 | |
| 100万円 | 約600円 | |
| 500万円 | 約3,000円 | |
| 1,000万円 | 約6,000円 | |
| 前回紹介したVTIの経費率は年0.03%なので、VTはVTIより年0.03ポイント高くなります。 | ||
| 100万円を投資した場合、その差は年間約300円です。 | ||
| ETF | 経費率 | 100万円当たりの年間コスト目安 |
| — | —: | —: |
| VTI | 年0.03% | 約300円 |
| VT | 年0.06% | 約600円 |
| 世界中へ分散できることを考えると、年0.06%は十分に低い水準だと私は感じます。 | ||
| ただし、米国ETFを日本から購入する場合は、経費率以外に為替手数料や売買手数料などがかかることがあります。 |
④ 国や企業の入れ替えを自分で判断しなくてよい
世界経済の中心は、長い歴史の中で変化してきました。
今後も、現在の大企業が成長し続けるとは限りません。
VTでは、企業や国の時価総額が変化すると、それに応じて組入比率も変わります。
成長する国や企業の割合は大きくなり、存在感を失った国や企業の割合は小さくなります。
自分で、
「今後はアメリカよりインドが伸びそうだ」
「日本株を増やした方がよいのでは」
などと予想して売買しなくても、世界市場の変化に合わせて構成が調整されるのです。
この自動的な新陳代謝は、長期投資における大きなメリットです。
⑤ 世界経済全体の成長に投資できる
VTは、特定の国だけではなく、世界全体の企業活動へ投資するETFです。
ある国の景気が悪くても、別の国が成長する可能性があります。
投資先を世界中へ広げることで、特定の国に依存するリスクを抑えられます。
「どの国が勝つかを予想するのではなく、世界全体の成長を取り込みたい」
という考え方に合ったETFです。
全世界株式でも米国の影響は大きい
VTは全世界株式ETFですが、すべての国へ均等に投資するわけではありません。
各国の株式市場の大きさ、つまり時価総額に応じて投資割合が決まります。
現在の世界株式市場では、米国企業が大きな割合を占めています。
そのため、VTを購入しても、資産の半分以上は米国株になるのが一般的です。
「全世界株式だから米国への投資割合は小さい」と考えるのは正確ではありません。
VTは、
米国を中心にしながら、日本、欧州、新興国なども保有するETF
と考えると分かりやすいでしょう。
全世界株式へ投資しつつ、米国企業の成長もしっかり取り込める構成です。
VTとVTIの違い
| 項目 | VT | VTI |
| 投資対象 | 世界の株式市場 | 米国の株式市場 |
| 保有銘柄数 | 約10,000銘柄 | 約3,500銘柄 |
| 投資地域 | 先進国・新興国 | 米国のみ |
| 経費率 | 年0.06% | 年0.03% |
| 米国以外の株式 | 含む | 含まない |
| 特徴 | 世界全体へ分散 | 米国全体へ集中 |
| VTは世界中へ分散するETF、VTIは米国市場全体へ投資するETFです。 | ||
| どちらにも共通しているのは、大型株だけでなく中型株や小型株まで含んでいることです。 | ||
| 選び方を簡単に整理すると、 | ||
| 世界のどの国が成長しても取り込みたいならVT | ||
| 今後も米国が世界経済をリードすると考えるならVTI | ||
| となります。 | ||
| ただし、VTにも米国株が多く含まれているため、「VTを選ぶと米国株を避けることになる」わけではありません。 |
VTとオルカンの違い
日本では、全世界株式へ投資する商品として「オルカン」の愛称で知られる投資信託が人気です。
VTとオルカンは、どちらも世界中の株式へ分散投資する商品ですが、仕組みには違いがあります。
| 項目 | VT | オルカン |
| 商品分類 | 米国ETF | 日本の投資信託 |
| 売買方法 | 市場でリアルタイム売買 | 1日1回の基準価額で売買 |
| 購入単位 | 原則1口 | 100円程度から購入可能 |
| 取引通貨 | 米ドルまたは円貨決済 | 日本円 |
| 分配金 | 原則として現金で受け取る | ファンド内で再投資 |
| 自動積立 | 証券会社による | 設定しやすい |
| 投資対象 | 大型・中型・小型株 | 主に大型・中型株 |
| VTは小型株まで含むため、投資対象はオルカンより広くなります。 | ||
| 一方で、オルカンは日本円で少額から自動積立でき、分配金もファンド内で再投資されるため、資産形成の手軽さでは優れています。 | ||
| 私なら、 | ||
| 世界の小型株まで直接保有したいならVT | ||
| 手間をかけずに積立を続けたいならオルカン | ||
| と説明します。 | ||
| どちらが優れているというより、管理のしやすさや投資スタイルで選ぶ商品です。 |
VTのメリット
VTの主なメリットは次のとおりです。
・世界中の株式へ1本で投資できる
・約10,000銘柄に分散できる
・先進国だけでなく新興国も含まれる
・大型株、中型株、小型株を保有できる
・経費率が年0.06%と低い
・国や企業の入れ替えを自分で行わなくてよい
・特定の国に集中するリスクを抑えられる
VTのデメリットと注意点
米国株だけに投資するより成績が低くなることがある
近年のように米国株が他国の株式を大きく上回る時期は、世界中に分散するVTよりも、米国株へ集中するVTIの方が高いリターンになることがあります。
分散投資は、必ず収益を高くするためのものではありません。
特定の国が大きく下落した場合の影響を抑え、将来どの国が成長するか分からないことに備える考え方です。
世界中に分散しても値下がりする
VTは約10,000銘柄へ分散していますが、株式だけで構成されたETFです。
世界的な金融危機や景気後退が起これば、VTも大きく値下がりする可能性があります。
銘柄数が多いから元本割れしないわけではありません。
長期投資を前提としても、暴落時に保有を続けられる金額で投資する必要があります。
為替の影響を受ける
VTは米ドルで取引される米国ETFです。
VTの価格が上昇しても、円高が進めば円換算した資産額が減ることがあります。
反対に円安になれば、円換算額が増える場合もあります。
分配金を自分で再投資する必要がある
VTは原則として年4回、分配金を支払います。
日本の再投資型投資信託とは異なり、分配金は現金で受け取ることが基本です。
複利効果を高めたい場合は、受け取った分配金を自分で再投資する必要があります。
少額の分配金ではVTを1口購入できない場合もあり、現金のまま残ることがあります。
米国と日本の税金が関係する
VTの分配金には、米国側と日本側の税金が関係します。
NISA口座で保有しても、米国側の課税が残ることがあります。
また、VTの内部では各国の株式から配当を受け取る際に現地課税が発生することがあります。
全世界株式ETFの税金はやや複雑なので、完全な初心者には日本の投資信託の方が管理しやすい場合があります。
VTは新NISAで購入できる?
VTは、取扱いのある証券会社を通じて、新NISAの成長投資枠で購入できます。
ただし、基本的にはつみたて投資枠の対象ではありません。
つみたて投資枠で全世界株式へ投資したい場合は、オルカンなどの対象投資信託が選択肢になります。
新NISAで全世界株式へ投資する場合は、
つみたて投資枠で投資信託を積み立てる
成長投資枠でVTを購入する
という2つの方法が考えられます。
初心者が毎月一定額を積み立てるなら、投資信託の方が簡単です。
一方、ETFを直接保有したい人や、分配金を受け取りたい人にとっては、VTが候補になります。
VTはどんな人に向いている?
VTは、次のような人に向いています。
・1本で世界中の株式へ投資したい人
・米国だけに集中することが不安な人
・どの国が成長するかを予想したくない人
・大型株だけでなく中小型株も含めたい人
・10年、20年という長期保有を考えている人
・低コストの全世界株式ETFを直接保有したい人
反対に、次のような人には別の商品が合う可能性があります。
・米国株の成長に集中して投資したい人
・100円程度から自動積立したい人
・分配金の再投資を自分で行いたくない人
・為替や外国税の管理を簡単にしたい人
・値下がりをできるだけ避けたい人
青さんのVT評価
| 評価項目 | 青さん評価 | 理由 |
| 初心者向け | ★★★★☆ | 商品内容は分かりやすいが、米国ETFの売買や税金には知識が必要 |
| 分散性 | ★★★★★ | 世界の約10,000銘柄へ投資できる |
| 成長期待 | ★★★★☆ | 世界経済全体の成長を取り込める |
| 低コスト | ★★★★★ | 経費率は年0.06% |
| 分配金 | ★★☆☆☆ | 高配当目的の商品ではない |
| 手軽さ | ★★★☆☆ | オルカンなどの投資信託より管理に手間がかかる |
| 家族へのおすすめ度 | ★★★★★ | 投資先を迷う人には非常に分かりやすい選択肢 |
青さんなら家族や友人にすすめる?
もし家族や友人から、
「どの国に投資すればよいか分からない」
「米国だけに投資するのは少し不安」
と相談されたら、私はVTを有力候補として紹介します。
理由は、特定の国の将来を予想しなくても、世界中の株式市場へ分散投資できるからです。
今後も米国が強い可能性は十分あります。
一方で、20年後、30年後にどの国が世界経済の中心になっているかは誰にも分かりません。
VTを保有していれば、世界の株式市場の構成が変化したときも、その変化を自動的に取り込めます。
ただし、投資初心者に無条件でVTを直接すすめるわけではありません。
少額から自動積立を続けたい人には、オルカンなどの投資信託の方が簡単だからです。
私なら、
「ETFを直接保有したいならVT」
「手軽に積み立てたいならオルカン」
という違いを説明し、本人が続けやすい方を選んでもらいます。
投資では、最も高いリターンの商品を予想することよりも、納得して長く続けられる商品を選ぶことが大切です。
VTIとVT、家族にすすめるならどちら?
VTIとVTは、どちらも低コストで幅広く分散された優れたETFです。
最終的には、どこまで投資対象を広げたいかで判断します。
| 考え方 | 向いているETF |
| 米国経済の成長に期待している | VTI |
| 世界経済全体の成長に投資したい | VT |
| 米国以外も保有したい | VT |
| より低い経費率を重視する | VTI |
| 投資先の国を選びたくない | VT |
| 米国の中小型株まで広く保有したい | VTI |
| どちらを選んでも、世界を代表する米国企業は多く含まれます。 | |
| 「米国を中心に投資するか」 | |
| 「米国を中心にしながら世界中にも広げるか」 | |
| という違いだと考えると分かりやすいでしょう。 |
まとめ
VTは、世界の大型株・中型株・小型株、約10,000銘柄へ1本で分散投資できるETFです。
経費率は年0.06%で、世界の投資可能な株式市場の大部分をカバーします。
VTの魅力は、どの国や企業が将来成長するかを自分で予想しなくても、世界市場の変化を自動的に取り込めることです。
一方で、株式だけで構成されているため、世界的な株価下落時には大きく値下がりする可能性があります。
また、ETFを直接購入する場合は、為替、分配金の再投資、外国税なども考える必要があります。
VTは、
「投資先の国を選ばず、世界経済全体の成長に長期で投資したい人」
にとって、有力な選択肢の一つです。
ただし、手軽さを優先するなら、オルカンなどの低コスト投資信託も十分に魅力的です。
商品そのものの人気ではなく、自分が無理なく長く続けられる方法を選びたいですね。
次回予告
次回は、米国を代表する大型企業約500社へ投資するETF、VOOをご紹介します。
「米国市場全体へ投資するVTI」と「S&P500へ投資するVOO」では、何が違うのでしょうか。
保有銘柄数、経費率、値動き、向いている人を比較しながら考えていきます。
※本記事は特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資には元本割れの可能性があります。商品の内容、手数料、税制などを確認し、ご自身の判断と責任で投資してください。
